Windows95と泥棒



 「事務所荒らしにご用心」警察から通達が回ってきた。何でも近所のビルに泥棒が入ったらしい。現金ばかりをごっそり持っていったとか。「事務所に現金を置かないように..」と親切に注意してくれている。自慢じゃないが,この事務所に現金は無い。
 それに24時間誰かいるので,泥棒さんも大変だ。いや,米国あたりの強盗は,人がいるのを狙って入るらしい。自分でコソコソ探すより,銃で脅して金を出させた方が効率がよいからだ。となると,アメリカ・ナイズされた日本も24時間人がいるというのは,変えって不安の対象か?
 泥棒も人類最古の商売の一つ。泥棒さんの存在で,食ってる人達もたくさんいる。この世から,泥棒さんが居なくなれば,大勢の人が失業者する。
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 インターネットの世界では,データを盗まれないため,ありとあらゆるセキュリティ技術が駆使されている。 最近はファイアー・ウォールが主流で,大企業のネット・ワークには,そう簡単には外から入れない。telnetなんてとんでもない。  セキュリティを強化すればするほど善意の技術者は不便を強いられる。 せっかくネット・ワークで接続されているのにアクセスできない。いちいちファイアー・ウォールの内側のマシンを使いに移動しなければならない。                 *****
 Windows95のセキュリティはお粗末そのものだ。ログオンするのにパスワードも不要だ。サーバとしてのセキュリティは無いに等しい。セキュリィティをよくよく考えてみると,ほんの一部の不心得者のために莫大な金額が使われている。正確な数字は知らないけど,日本全国で盗難防止のために消費されている金額は相当なもんであろう。
 経済の法則から考えると,この金額がすべて損失とはならず,世の中に回ることになっている。ゆえにハッカーは産業活性化に役立っているなどという馬鹿げた理屈は通じない。不便極まりない。
 日本のコンピュータ・ネットワークはユーザの善意で支えられている。これはコンピュータ・ユーザに限らず日本全体が日本人の善意で動いている。いくらネットワーク・セキュリティを強化しようが,人的要因たる穴は無限に存在する。
 例えば,ログオフせずにEWSから離れることに危機感を感じる技術者はかなり少ない。トロイの木馬を仕掛けるのに3秒もあれば足りる,という事実は皆知っている。まさか誰も実行しないと思い込んでいる。  古来より大勢の日本人は,「人を見たら泥棒と思え」で生きるより,「渡る世間に鬼はなし」で生きた方が幸せだと信じてきた。それがコンピュータ・ネットワークの時代にいつまで続くが見物だ。
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 最近,わが社のネットワークが外部とIP接続された。若い技術者のT君が,一生懸命セキュリティを強化している。お陰で今まで使えていたコマンドが次々とエラーになる。不便極まりない。セキュリティを強化すればするほど使いにくくなる。
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MS-NetworkのRASは安全だ。  何しろ必死でマニュアルを読んでも,なかなか接続できない。しくみを記述した資料もほとんどない。IPにバインドしなければ,他のネットワークには接続できないはずだから,多分,かなり安全だと信じている。そのうち熱心なハッカーによって破られるだろうが...<BR>

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