スターリングラード


 戦争オタクの私としては,この映画をずっと期待していた。 歴史としてどうあれ, 映画としては,かなり興奮の連続 であった。
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 スターリングラードはドイツ軍とソ連軍の戦いである。 双方の状況が, 迫力ある映像と共に余す無く映し出される。 そろそろ戦闘場面に飽きた頃, 物語は次の展開へと進んでいく。 退屈させない素晴らしい構成である。
 近代の戦争の中心は集団戦闘である。 この映画は,近代戦争において, 中世の一騎打ちの概念で作られている。 狙撃手同士の戦いという, おおよそ実戦では起こりそうにない状況を リアルに描いているところが凄い。
 もちろん近代戦争なので,一騎打ちだけはなく, 彼らを取り巻く戦闘集団や民間人達を見事に融和させている。 とにかく見ていて違和感がない。
 残念なのは,最後の場面だ。 狙撃手が相手に声を掛けてから射撃することはありえない。 もっとも,監督にしてみれば,ここで一騎打ちを 表現したかったとは思うが, 私はシラけてしまった。
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 この映画のテーマたるスターリングラードの戦いは何度か映画になっている。 ただし,この映画ほどソ連軍がボロクソに撮られている映画は知らない。 第2次世界大戦で最も人的被害が大きかったのはソ連だから, かなり史実に近いと思うが, よくロシアから文句が出なかったもんだ。
 現在の評価では,スターリングラード自身,戦略上全く無意味だと言われている。 ヒトラーの意地のために多くの人が犠牲になった。 我日本帝国も先の大東亜戦争では,無意味な作戦を数多く実施し, 多数の戦死者を出している。しかし,責任は誰も取っていない。 ちょうど,今の日本経済の責任を誰もとっていないのと同じである。
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 この映画の,ご教訓
・狙撃手にはなりたくない。
・戦地でのシャワーは我慢するべきだ。
・先送りは日本の専売特許ではない。

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