我慢の日
本日の痛みレベル=9.5
朝から随分痛い。とても朝食を食べれそうにない。
「息苦しさや痛みは我慢せずに伝えてください。」って,
予定表の印刷物にも書いてある。
こういうときの頼もしい味方,東芝LaLa Voiceがある。
朝,看護婦さんが様子を見に来たとき,訴えて見る。
「すいません。すごく痛いのですが,何とかなりませんか?」
と男性の声で読み上げる。
「わっ,凄い,凄い,機械がしゃっべてる」
看護婦のA嬢が嬉しそうに言っている。
「すぅいぃまぁせぇんん。すごく痛いのですが,何とかなりませんか?」
再度,同じ内容を,少し遅い速度で読み上げる。
「わっ,読む早さも変わってる。凄いねぇ〜」A嬢の声に消されてしまう。
いや,そうじゃなく,本当に痛いのだ。
「本当に痛いのですが,なんとかしてください」
今度は文章を変えて読み上げる。
「きゃぁ,凄い,簡単に内容変わるんやわぁ」A嬢が心の底から感激してる。
いや,そうじゃなくて,何とかしてよぉぉ。
男の声が聞こえにくかと思い,女性の声に変えて読み上げる。
「本当に痛いのですが,なんとかしてください」
「きゃぁ,女の声に変わったぁぁ。すごぉぉぉぃい。」A嬢がはしゃぐ。
いや,そうじゃなくて。。。。。。
*****
そう,ここで私はやっと気が付いた。
パソコンの読み上げる鷹揚の少ない機械的な声では,
本当に痛いという,緊急性が全く伝わらないのである。
すべてが冗談に聞こえるのか,対応してもらえそうにない。
暴れまくってやろうかと思ったけど,我慢する。
とにかく,主治医のM医師を待つことにした。
鎮痛剤談義その1
I薬剤師が入ってくる。いいところに来た。
LaLaVoiceを使って,いかに痛いかを説明する。
現在使ってる鎮痛剤はソランタールである。
塩基系のため,安全だけど,ぜんぜん効いてない。
第一,塩基系はどのようなメカニズムで鎮痛作用があるのか,
はっきり分かってない。
そのことを必死で説明して,
何とかボルタレンを出してくれるよう説得する。
薬剤師なら分かってくれるだろう。
「ボルタレンのようなきつい鎮痛剤は,あまり出さないんです」
I薬剤師が堂々と言う。
あまりと言っても,手術の次の目くらいいいなじゃないの?
喘息によくないというのが,医師の考えらしい。
「喘息は治ってる。」とか,
「アスピリン喘息はアレルギーには無関係だ!」とか,
「ボルタレンは何度も出してもらってる。」
とお薬手帳を見せて,切々と訴える。
こんなところで,喘息談義が出てきたのだ。
俺は妊婦ちゃうんやぁ〜!!
なんでもいいから,酸性の鎮痛剤をくれぇ!!!
残念なんがら,LaLaVoiceでは絶叫モードがない。
*****
非ステロイド抗炎症薬(NSAID)は痛みを和らげるの使い,塩基性と酸性がある。
ソランタール(塩酸チアラミド)は,塩基性で副作用がほとんどない。
ただし効かない。
ボルタレンはフェニル酢酸系NSAIDであり,
炎症を引き起こすプロスタグランジン(PG)の合成酵素シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害する。
これはよく効く。が,副作用も強烈でボルタレン潰瘍という言葉があるくらいだ。
効く薬は副作用は必ずある。
副作用の無い薬は効かないもんだ。
副作用にビビっていれば,効く薬なんて飲めない。
素人じゃないんだから,
副作用をうまくコントロールするのが,プロの仕事ではないのか。
「間をとってロキソニンはどうですか?」
I薬剤師が提案する。
間って,なんのこっちゃ?
別に如何わしい薬の商売してるわけじゃあない。
私に使う鎮痛剤を相談してるのだ。
それでも,ここで,ひつこくボルタレンを要求しても,
出てこなかったら,塩基系から逃れられない。
まずはロキソニンをゲットすることにする。
*****
ところが,看護婦さんが持ってきたのは,やっぱりソランタール。
喘息患者にはこれしか出せないとのこと。
本来なら,切々と訴えればいいんだが,何しろ声が出せない。
そう。声帯の保護が必要で,感情に任せて大声出したら,傷口が開いてしまう。
そのためのストレスや膨大なものである。
私自身,喋れないことがこれほどのストレスになるとは,思いもしなかった。
どうやら,敵は意地でも出さん!という方針か。
素人相手に意地張るなよぉぉぉ
この痛み,なんとかしてくれぇ
私は,女々しくもこの時点で,まだ,I大学病院を信じていた。
患者が痛いと訴えてるのに,まさか,
このまま,ほっておくことはないだろう,
と高をくくっていた。
それが,大いなる間違いだったことが分かるには,まだ何日か必要だった。
もし,ソランタール投薬以外,何もしてくれないなら,
脱走ということも方法の一つだし,
小川君にお願いして,ボルタレンを差し入れてもらえばよかった。
が,急に鎮痛剤を点滴するなんて事態になることを恐れたのである。
結果的には何もしてくれなかった。
別に看護婦さんが意地悪してるわけじゃない。
規則でそうなってるようだ。
*****
I薬剤師にこっそり聞いたんだけど,今まで,手術後,
ボルタレンを4錠とか,あまり出さないらしい。
そう,I大学病院は
体育会系の病院
だったのだ。
基本的に痛みは患者が我慢することになっているようだ。
*****
本来,私は痛みに強い方なのだ。
会社の皆さんはご存知である。
今まで,各種怪我+歯痛を痛み止めなしで頑張ってきた実績がある。
もっとも,最近,怪我をしなくなったので,
痛みに対する耐性が弱くなったんじゃないか?
などとバカなことを言う奴もいるけど,
THC
の倉田先生が腰を矯正するときの痛みに
絶えているんだから,大抵の痛みには耐えれるはずだ。
その私が痛いと言ってるんだから,痛いのだ。
多分今まで,私ほど酷い扁桃腺を摘出した元喘息の人はいなのだろう。
しょっちゅういれば,いくら公立病院でも必ず問題になっているだろう。
えらいとこ入院したぞぉ
======
本日のご教訓
・体育会系の病院は根性がいるぞ
・元喘息患者は痛いのを我慢しろ!
▲入院記TOPへ戻る
▼次へ